bh 飯島由敬・著書ご紹介–
開業によって、他人の人生を狂わせることも…
「開業することによって、他人の人生を狂わせる」…なんともいいようのない不安に襲われる言葉ですね。
これは、私が長年、店舗デザイナーをしていた時に感じていたことです。
開業に失敗することで、開業者自身だけではなく、開業にかかわってくれていた他人の人生も狂わせるのです。
以前、私が店舗デザイン設計事務所を経営していた頃に経験した個人の独立開業の仕事の始まりは、ほとんどがこんな感じでした。
最初に、出店候補の物件探しから始め賃貸契約。そのまま店舗デザイン設計や店舗施工会社探しに走る。その後、急いで融資他なんらかの資金調達に着手。
先に物件契約したことにより、頭の中は急いでお店を立ち上げることしか無い。
「不動産契約から店舗完成までの期間に払うべき家賃が無駄になってしまう。家賃流出を最小限にくいとめるべく設計と工事を超特急で進めろ!」
このような感じで、切羽詰まった状況に陥った開業者。開業者の大半がこのように心を揺らした状態で、店舗設計を依頼してくるのです。
設計の依頼を受けた側としては、 何日も徹夜し、大量の図面を描き、幾度も打合せ。
にもかかわらず、結果的に融資が通らなかったからという理由で計画はその段階で中止。
数ヶ月にわたり作業した報酬は結局もらえず、まさにタダ働き。こうして最後の最後でにお金がもらえない。
個人の独立開業者の依頼というのは、こんな危険性を伴うものが大半でした。
開業出店のプロセスなど経験が一度もない個人開業者は、出店までの進め方や順番も知らないわけです。
どういうわけか、一度走り出したら止まることなど考えずにパニック状態のまま無謀に走り続ける。
その結果、融資は失敗し、自己資金は不動産契約などの支払いでほとんど使いたしてしまう。
計画が頓挫した後、不動産業者から返金してもらえず路頭に迷った開業者もいました。
計画が中止されても、開業計画が始まってしまっていれば、設計や工事の作業は進められています。
店舗デザイン設計の損失は、図面等印刷物と費やした時間であり、最悪お金が貰えずとも会社が潰れる様なことはありません。
しかし、施工会社はそうは行きません。すでに店舗工事を始めていたなら、「物と人」を動かしているため「お金」も動いています。動いたお金が回収できなければ、多大なる損失を被ることになるのです。
実際に遠い昔、私が開業者と引き合わせた工事業者を倒産させてしまった苦い経験もあります。
無謀な開業計画によって、開業者自身の人生だけではなく、開業に関わってくれた他人の人生も狂わせる可能性があるのです。
この危険なキッカケを作り出すのは、すべて「開業者自身の知識不足と準備不足」です。
開業するからには、自分だけではなく他人の人生も狂わせることのないように、開業に関する知識を得て、しっかりとした準備をする必要があるのです。