bh 飯島由敬・著書ご紹介–
旧職場の近所への出店は、現オーナー次第?
「常連のお客さんも来てくれるから、今の職場の近くにお店を出したいな~」
そう考える開業者さんは多いのではないかと思います。
しかし、「お世話になっている今のお店のオーナーが、承諾してくれるかなぁ?」とも、考えますよね?
「今の職場の近くで開業したいんですけど…」 と相談してみると、「もちろんいいよ!頑張りなさい。顧客もそのまま引き継いでも構わないから」と言ってくれた!
「オーナー、なんていい人!」と思って開業してみたけど…結果的には大変モメてしまった…。
こういった実例は、けっこう多いのです。
きちんと事前に話していたし、OKしてくれていたのに何故?
現職場のオーナーさんのありがたい言葉は、アテにしてはならないということです。
実際にその地で必死に運営しているオーナーさんの本音は、やはり穏やかではないのは当然のことです。
自分が開業して何年も運営を積んできた時点の心模様を想像してみれば明白なはずです。
一生懸命、手塩にかけて育ててきたスタッフが突然退社し、近所にお店を出す。
長年の関わりから最初は快い返事をしたものの、それはやはり脅威でしかありません。
この心理は、恋人同士の別れ話に似ています。
例えば、別れを切り出した彼女の第一声に対し、最初は「辛いけど、君の為になるなら…」と、カッコつけた発言をする。
しかし、いざ別れの瞬間が来たら、抑えられない感情が湧き上がるものです。しまいには、罵倒したり、泣きわめいたり…。オーナーさんの本音はそんなところなのです。
ましてや、近隣に出店となれば自店の他の客までもが、そちらに流れてしまうという恐怖も加わります。
どんなに現職場のオーナーと良い関係を築いていたとしても、開業をきっかけに断絶ということもよくある話。
開業の難関として、ただ退職するだけでも揉める傾向にあるのに、近所で競合店として出店するというのは、やはり穏やかな話にはなりません。
近所で出店し、今までのお客さまをそのまま引き継ぎたいという気持ちはよくわかります。
しかし、仮に今までのお客さまを引き継げなくとも、新たな地で1から新規客を獲得していく覚悟でのぞむことも必要です。
先々、常に近所に旧職場オーナーの目が光っているという状況は、精神衛生上も良くありません。
なにより、イチからの顧客獲得の為に様々な工夫や宣伝方針を、開業時から本気で考えることは、将来の長い運営に非常に意味あることになります。
過去の事例でも、旧職場の近くに開業したがために、ずっと神経をすり減らしながら運営をしているお店もありますが、常にビクビクした状況から脱せず悩んでいたりします。
お客さまは常に前向きで素敵なオーナーさんのところに集まるものです。テンションが陰っていると、その大事なお客さまも離脱してしまう危険性があります。
こういった点から、いくら現オーナーが快諾しても、旧職場の近くでの開業はおすすめしません。