bh 飯島由敬・著書ご紹介–
「家族の同意」の重要性
私は長年様々な業種の開業に携わってまいりましたが、意外と重要なのが「家族の同意」です。
開業出店時には、当然開業者さんにはそれぞれの事情があるものです。
なかには、開業まで両親や奥様、旦那様に開業の意志を伝えずに計画に走ってしまっている方も時折いますが、こういった場合、大きな混乱を招きます。
地方から都心に上京し長年の修行を経て念願の開業計画に着手。
ここでいう着手とは、すでに出店計画の物件契約を済ませていたり、さらには設計や工事の打合せに入ってしまっているということ。
そんな計画の渦中で、地元の両親にその旨を伝えたところ、猛反対に見舞われ計画が進められなくなったりすることもあるのです。
開業者さんの言い分としては、すでに大人として独立をしているわけで、「自分の事に、いちいち両親の承諾など必要ない」と考える方もいるようですが、実際には、そういうわけにはいかないことも。
そこで、実際に私が見てきた事例を幾つか紹介しましょう。
すでに開業計画に着手した後で両親に連絡をしたところ、親御さんが重い病気であることが発覚。
親御さんから、「遠方での開業なんてとんでもない!緊急事態ゆえ、帰ってきて助けてほしい!」と言われ、やむを得ず開業計画を途中で中止せざるを得なくなった開業者さんがいました。
他にも、両親との不仲ゆえに連絡を長年取り合っていなかった、という開業者さんもいて、自分の計画を知らせたところ、「実家の家業(美容室や理容室)を後継者として存続させて欲しい。」ということもありました。
この開業者さんは親御さんにとって自分以外、他に身寄りの無いとのことで、悩みに悩みぬいた末に開業を中断しました。
この方はもちろん、すでに契約した不動産取得のための費用や、すでに発注した設計や工事の着手金などを損失させてしまった。
長年開業を夢見て必死に貯めてきた資金を一気にゼロにしてしまったわけです。
また、このように両親だけではなく、配偶者である奥様に、事情を一切知らせず開業計画に着手した人もいました。
この人の場合、奥様の猛反対を押し切り、なんとか開業は果たせたものの、開業をきっかけに夫婦仲が悪くなり、離婚する結果に。
特に、奥様や旦那様に対し、一切の相談や事情を話すこと無く計画を進めると、大きな問題に発展してしまいます。
独立の当事者となる開業者にとって、仮に両親や配偶者は計画の当事者ではないにしても、身内である以上、自分の計画や状況を知らずにいるというのは非常に問題です。
つい後回しにしがちな「家族の同意」というプロセスは、必ず開業計画の着手前に知らせておくべきです。
開業までのプロセスには、想像を絶する程のやるべき事が山積みです。
どんなに優秀で影響力も行動力も備えている人物であっても、開業では多大なる集中力と根気が必要不可欠。
自分の将来の計画、独立開業への計画を知らせ、仮に身内に反対された場合、反対を押し切っての開業では、さらなる神経を使わなければならなくなり、肝心な集中力も根気も削がれてしまいます。
こればかりは事前にしっかり伝えておかないと今後の計画進行が非常にスムーズに進まなくなる危険性をはらんでいます。
開業者はこういった重要性を事前に十分理解しておきましょう。