bh 飯島由敬・著書ご紹介–
居抜き物件のメリットとデメリット
<居抜き物件とは?>
出店物件探しの際、居抜き物件というものが時折存在します。
居抜き物件とは、以前も同業種が運営されており、その店が退店の際、店舗の造作をそのまま壊さずに貸し出しているような不動産物件です。
以前の店舗を、そのまま引き継いだ状態で賃貸契約できるという、開業者にとってなんとも好都合に思えるような条件の物件です。
<居抜き物件がメリットと思われる要素>
居抜き物件が好都合と捉える要素には、なんといっても自分のお店を工事する際の予算が格段に安く抑えられるという部分でしょう。
店の程度の良い状況であれば、機器類も、造作もそのまま再利用できるし、お金をかける部分は最小にできるし看板のみ新しい店舗名のものに交換すれば済むというもの。
あるいは、多少の修繕が必要だとしても床や壁の塗替え、貼り替え程度で済む。どちらにしても開業予算を大幅に節約できる可能性があるわけです。
しかし、この居抜き物件を選ぶ際には注意しておくべきポイントがあります。
<居抜き物件のデメリット>
周辺に済む人々は、もしお店の看板のみが新しく変わった時に、「新しいお店が始まるのだな」と感じるでしょうか?
もしかしたら、「あそこのお店、店名変えたんだな」と認識するだけかもしれません。
もし以前のお店が今まであまり繁盛していないお店だったとしたら?
周辺の客は、新しいお店を試してみようという意欲につながるキッカケが決定的に弱いということになりかねません。
さて、なぜ以前のお店は退店してその場を離れたのでしょうか?
もちろん、手狭になったことを理由に移転拡大というケースもあるでしょう。
しかし、大半は運営が厳しくなったことが原因による退店の方が多いとは思いませんか?
<旧店舗の退店理由と運営状況はどうだったのかを確認すべき>
一見、開業者にとってメリットと思える居抜き物件も、実際にはデメリットを大いに含んでいることがあります。確かに開業予算を低く抑えられるというのは資金事情的には大きなメリットでしょう。しかし、今後の運営面を考えると必ずしも都合が良いとは限らないということです。
もちろん、最初の段階から資金調達能力が低くて、どうしてもタイトな開業予算しか確保できないというのなら居抜き物件の検討もありでしょう。
しかし、居抜き物件を選ぶ際に必ず確認しておきたいところがあるのです。
なぜ以前の店舗は退店することになったのか?運営状況はどうだったのか?流行っていたのか?物件検討時、不動産屋にこれらを確認するだけでも十分な検討の材料になるはずです。
<それでも居抜き物件を選ぶというのなら>
もし居抜き物件を選ぶのであれば、前述した周辺の客への訴求力として、せめてお店の雰囲気がガラッと一変するほどの施しをすることを視野にいれるべきでしょう。
少なくとも「あそこのお店、改装したみたい」ではなく、「以前のお店とは、別のお店が入れ替わったみたい」と、周辺の客が認識できる最低限の変貌を遂げるべきです。
居抜き物件は開業者の予算事情においては確かにメリットがあるかもしれません。
しかし、その地で新規客を集め、長期的な健全運営をするための店を用意するという視点では、必ずしもメリットばかりではないということを事前に知っておきましょう。