店舗工事での正確な競争見積(入札)の考え方

開業時において店舗の工事はメインイベントで、開業の必要な資金の大半が工事費に使われることになります。
この工事費は少しでも安く抑えたいと当然思いますよね。

店舗工事に限らず、世の中の大きな買い物には同じ商品を複数の店(会社)から同時に見積りを取ってみて、最も安い額面を提示したところから購入することが、多いですよね。
店舗工事でもこうした狙いから、相見積もり(入札)で安い会社を探そうとするわけです。

しかし店舗に関しては、正確な基準を理解していないと本当に安いかどうかの判断はできません。
現在の店舗設計や工事業界のほとんどがデザイン設計と工事を同時に請け負っている会社のが多いのですが、こうした会社を相手に複数社に見積りを依頼し、最も安いところを探し出そうとしても、競争が成立していない意味のないレースになってしまっていることが多いのです。
店舗設計施工会社にそれぞれ依頼している見積りは、同じ条件で伝えたつもりでも、材料も数量も、何もかもが異なる条件での比較をしていることがほとんどです。

ここでは、美容室の工事を例に考えてみましょう。

「15坪の店舗に、カット面3面、シャンプー2台、店舗の雰囲気は、モダン和風のイメージ…こんな感じで、見積りと図面よろしく!」
などと、曖昧な情報で競争をかけているケースがよくあります。

そんな情報だけで、4つの会社から出た見積りはそれぞれの会社の見解による設計に基づく見積(積算結果)となります。
◆A社:大理石などを多く使った解釈のデザインによるモダン和風テイスト→1300万円の見積
◇B社:木質を多く使った解釈のデザインによるモダン和風テイスト→1000万円の見積
◆C社:漆喰壁など左官材料を多く使った解釈のデザインによるモダン和風テイスト→900万円の見積
◇D社:普通のペンキ塗りを多く使った解釈のデザインによるモダン和風テイスト→600万円の見積

さて、果たしてD社が最も安い会社でしょうか?

4社はたしかにモダン和風を上手に表現したデザインを提案していたとしても、同時に提出された見積書の工事費用に関しては4社は一切基準が一致しておらず、これでは競争が成立していません。

「詳細な設計内容」を提示することで、はじめて正確な競争が成立します。まずは一つのデザイン設計図書が完成していないと、肝心の競争は始まりません。
同じ材料、同じ物量、同じ時期、同じ日数など、すべて同条件にしなければ本当に安い会社は選出できません。
だからこそ、工事業者選出以前に、店舗デザイン設計を詳細に作り上げておかなければならないのです。

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