bh 飯島由敬・著書ご紹介–
店舗工事中の不測の出来事・・・「近隣問題」
出店時のメインイベントは何といっても店舗の工事。
この店舗工事中にありがちな事件事故とも言えるのが「近隣トラブル」
開業に向けてしっかりと事業計画を立てて、店舗設計、店舗工事の打合せをしっかり行った上で、ようやく店舗工事という段階に差し掛かっている時。
本来なら、ワクワクが止まらない時であるはずなのだが、そういうわけには行かないこともよくある話。
「店舗工事の騒音がうるさい!」という近隣の苦情により、工事が中断させられると本当に最悪です。
工事中のこの段階というのは、逆算すると、OPEN日まで残り1ヶ月という時期。
ほとんどの場合、ありとあらゆるすべての支払額がすでに決まっており、ここで工事の延期など見舞われようものなら、OPEN日が延びてしまったり。
場合によっては工事費用の増額・・・なんてこともあり得ます。
こうした近隣トラブルで、実際に私が見てきた困った実例を幾つか紹介します。
工事着工時には、工事会社も開業者さんも、近隣挨拶から始まります。
「これから工事に取り掛かるので、しばらく大きな音がでたりしますが、よろしくお願い致します」
ところが…
店舗の真上の階に済む住人が深夜のタクシー運転手で、寝るのはすべて日中の時間帯であり、工事着工前からトラブル発生、とはいっても、開業者さん側は、いまさら進行を止めるわけにも行かないし…。
一旦、話し合いの上、承諾してもらったものの、実際には激しい苦情の連続。
結果的にはこのタクシー運転手のために、工事期間中ウイークリーマンションを借りて、寝泊まりしてもらったのです。
また、このような事例もありました。
同じく店舗の上の住人が、ちょうど工事着工と同じタイミングで、ガンの手術を終えて退院した日と重なってしまったのです。
「激しい音、振動などすべて止めて欲しい…」
この事例では、急遽工事の現場作業を最低限にして、主要な造作他、別の工場でパーツ(部品)分けして作り上げ、現場では音や振動を最小限に食い止めたのです。
とはいえ、それでも工事現場では音はどうにもならない部分もあり、少なからず住人を不快な思いをさせてしまった。
しかも、工法を変えたことによる追加工事予算の負担もアリ。
とまぁ、これ以外にも辛い出来事は数知れず経験してきました。
こういった不測の出来事というのは、意外とあるものです。
もちろん、過去全ての近隣問題による事件事故から、何らかの形で解決に導いてきましたが、全てが万事丸く収まったというものばかりではありません。
工事中の1ヶ月程度の出来事とはいえ、実際に入居するのは開業者さん自身です。
今後、上層階の住人たちとも良い関係を作っていかねばなりません。
工事中のトラブルはなんとか解決できたとしても、開業スタートの段階から非常に仲の悪い関係を作ってしまい、運営数年経っても、それが悩みとなる。
いつしか、どこか他の店舗に移転したい…と悩み続けている開業者さんも実際にいるのです。
近隣問題だけは、誠心誠意良い関係を築こうと努力しても、いわゆる先住民の立場が強いのです。
入居時に予測できないこれらの事情は、本当に開業者をトコトン悩ませる厄介なもの。
まるで悪いくじを引いてしまった、というような感覚かもしれませんが、
開業地を求めて不動産物件を検討している段階から、不動産業者に探りをいれてみましょう。
「こういった問題は起こりやすいかどうか」「大家さんや、近隣住民は問題なさそうか」などなど。
事前に近隣問題を気にしてみるのは、開業者として持っていて良い基準です。
一度場所を決めて不動産契約してしまったら、開業者さんは人生をかけてその地に根を張ることになります。
最低10年の長きに渡る運営の場を選ぶという心構えで、慎重に吟味すべきことです。