店舗デザイン設計者の人選は慎重に

開業のメインである店舗づくりで絶対的に必要不可欠な人材が、「店舗デザイン設計者」です。
※以降、店舗デザイナーや店舗設計者を総称して以後「デザイナー」とします。

デザイナーって、ただ図面を書いて、店舗の設計をするだけではないんですよ?
開業者さんの曖昧な理想を聞いて、実現化するためのイメージの提案をする。
理想と現実(工事費)のバランスをとりながら、実際に作業できるよう設計図面に落としこんでいく。
また、店舗工事の際には、設計どおりに工事が進んでいるかを、現場で職人さん相手に確認・指示をする。

そのため、このデザイナーがしっかりしていないと、開業そのものにはド素人である開業者さんの細かい要望を実現化することはできません。
開業者の夢をかなえる重要なファクターとなるデザイナーの役割は非常に重要です。

しかし!

デザイナーを長きに渡り生業としてきた私がいうのもナンですが…
このデザイナーという人種、どちらかというと…かなり扱いが難しい人種です。
いわゆるクリエーター(創作者)というジャンルならではの気質を持つデザイナーという職種の人は、10人中7人は扱いづらい!
(あくまでも私の個人的な基準デスケドネ・・・)

私、飯島由敬は、2000年のbh創業からヘアサロン開業プロデュースを始めた最初の頃は、現在とは異なり、店舗デザイン設計業務も私が兼任してやってました。
しかし、創業初期の初年度の段階からデザイナーを退くことを前提としていたため、早々に外注のデザイナーを起用し、私はプロデュース、コンサル的に主軸に、各分野ごと仕事は外注分担するようにしていきました。
様々な出店のプロデュースをしてきた16年の月日を振り返ってみて、意外にも、初期の頃、そこそこ経験を持つデザイナーというプロの人物たちが、最も私や開業者をイライラさせる事が多かったのです。
もちろんこれは、私がプロデューサーとしてデザイナーを上手くコントロールできておらず、いわゆるまだまだ発展途上だったとも言えるのですが。
しかし、それらを差し引いて考えても、工事業者の社長さん、現場の職人さんより格段に扱いづらいのがデザイナーでした。
残念ながら、実はこれ、店舗デザイン設計業界、工事業界共通の認識でもあることなのです。
かくいう私もデザイナーとして働いていた20代~店舗設計事務所として独立した29~34歳の頃って…
ご多分に漏れず、超・扱いずらかっただろうなぁ…な~んて思います。ホントお恥ずかしながら…
<余談:今考えると現在もレギュラー起用しているアトリエリベロ藤井真哉は最初に出会った時からず~っと優秀でした、長くbhを支えてくれており本当に感謝しています。>

さて、こうした“扱いづらさ”って、一体なにから発生するのでしょう?

それは、デザイナーが、いつの間にか“開業者さんの本当に欲しいものの実現化”でなく“開業者さんのお金を使って、デザイナーが欲しいものを実現化”しようとしてしまう。ということです
要するに、デザイナーは創作意欲の強さゆえ、「“誰のため”にデザインや設計をしているのか」を見失ってしまいがちなのです。

徹夜しながら魂を込めて作ったデザインや設計を渾身のプレゼンテーション(提案)で説明!
しかし、残念ながら開業者さんに気に入ってもらえなかった…
デザイナーはたちまち機嫌が悪くなり、遂には、「あなたセンス無いなぁ!もう、こんな店作るの辞めましょうよ!」なんて言い放つ始末。
嘘みたいに聞こえるかもしれませんが、本当にいるんですよ。いや、こういう人、多いんですよ。
開業者さんは、そんな奴に自分の大切な夢を託すのは辞めたほうが良いに決まってます。

あるいは…
デザイナーの迫力のあるプレゼンテーションで開業者さんを圧倒!
「このデザインは気に入らないです」なんて、絶対に言わせないような空気を醸す!
開業者さんもビクビクしながら、結局デザインの提案が気に入らない旨を伝えられず、大混乱…こんなこともよくありました。
これ、デザイナーを退き、プロデュースする立場になったら、すごくよく見えるんですよねぇ。
自分がデザイナーの頃は、気づいておりませんでしたが振り返ると、私の場合はどちらかと言えば、こんなんだったかも…(恥)

確かにデザイナー自身も、ほしいモノを作るべきです。
しかし、同時に「出資者でもある開業者さんがデザイナーと同じレベルでほしいモノ」でなければいけません。
デザイン設計という作業は、いわば共通志向の探求であり、お互いの共鳴が起こらないといけない。

私が思うデザイナーの理想像は、とにかく懐深く、何度変更してもスケジュールが許される限り、最後まで付き合う。
デザイン設計を開業者がなかなか気に入ってくれないなら、提案している作品の良さを押し付けるのではなく、手を変え、品を変え、気に入るまで無限に提案し続ける姿勢が必要です。

結果的に、提案を続けるのはデザイナーなわけですから、最終的にはやはりデザイナーの作品には変わりないわけです。
やがてお店が完成した後…「この店、私が作ったんです!」とデザイナーは周りの人に自信を持って言うことでしょう。これは当然です。
しかし、本当に重要なのは、それと同時に開業者自身も周りの人達に「この店、私が作ったんです!」と、まるで同じセリフを誇らしげに言えるような状況をガイドしてこそプロのデザイナーなのです。

クリエーターとして最高の作品を作り、なおかつ、開業者を最上級に満足させた。
この2点が成立しないようではデザイナー失格です。

デザイナーを選ぶ時、「なんとなくセンス良さそう…」「雰囲気ある人…」
そんなことで決めちゃ絶対にダメですよ。
ありとあらゆる質問を投げかけ、経験も聞いて、開業者さんとあらゆる意味で共鳴、共感が得られそうかどうかをまずは探りましょう。
「その業種のお店は、初の挑戦です」という人も起用しちゃダメですからね!
人生が賭かっている開業に、未経験者のチャレンジで付き合う必要はありません!
また、工事が始まれば一緒に作り上げたデザイン設計がどんなに素晴らしくても、それを実際の工事現場で完璧に再現するガイド(これを設計監理という)が出来なければ駄目デザイナーです。
デザイナーが現場側に指示を出したら、職人もピリっとするほどの「怖さ」「凄み」みたいな影響力を持ちえていないといけません。

開業者の夢実現の重要な立役者がとなるのがなにより店舗デザイン設計者(デザイナー)
決して、甘く考えずに慎重に人選していきましょう。

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