bh 飯島由敬・著書ご紹介–
大家さんとは、仲良くしておくべき?
開業で不動産物件をテナントとして借りて出店する場合、店舗工事という段階を踏むことになります。
時折、この店舗工事中に起こる事件として「大家さん問題」があります。
店舗工事中のありがちな事例をご紹介します。
工事業者が工事着工前の段階で、見積を作成する為、エアコンの室外機置き場、湯沸し器の設置場所など…これらすべてが大家指示により積算されます。
しかし、設計も工事も指示通りの積算を経て工事に着手したにもかかわらず、工事も後半に差し掛かる頃、たまたま工事現場に来た大家さんが突然こんなことを言い出しました。
「湯沸し器は熱風が嫌だから、やっぱりこの場所ではなく、お店の裏側に移動させろよ!」
これ…「はい、わかりました。」と簡単に済む話ではないのです。
この気まぐれな変更による設置場所の移動は、配管の距離(長さ)が大幅に増え、非常に大掛かりな工事となってしまいます。
また、状況によってはその建物の構造上その変更設置は不可能だったりすることもあるのです。
ましてや、かなり工事が進んだ段階での話です。組み上げた工事箇所を取り壊し、新たに作る直すほどの大工事に至ることになります。
この実例ですが、結果的に数十万円レベルの予算アップに!
しかも、さらに問題となったのは、増額工事代金は大家さんは一切負担するつもりなどがなく、「俺は大家だよ?嫌なら契約解除するから出ていってよ!」の一点張り。
費用負担は開業者持ちとなる理不尽な結果。
この一件以降、開業オーナーさんと大家さんは不仲になりました。
このように、工事中における追加予算発生というトラブルは開業者にとって、顔面蒼白となるほどの一大事に発展します。
大家発言による不測の出来事もありうるのです。
テナントを借りてお店を運営していくなら、「大家さんとは仲良くしておくべきであろう」と思うことでしょう。
しかし、この大家さんというのは全てが良い人とは限らないですよね。
「開業後も何かと干渉してくる…」
「大家側は入居者であるオーナーと仲良しになったつもりで、通常営業中でも勝手にお店に出入りしてくる…」
「騒音、店外の客の話し声などがうるさい等、運営中に何かと苦情を言ってきたりする…」
このように入居後に「大家さんが曲者だった」ということもあったりするのです。
だとしても、安易に移転や引っ越しなどできるわけがない。
開業者というのは物件を決めた段階から、その地に根を張って最低でも10年の運営を目指して日々活動していくわけですから。
けど、そもそも大家さんと親しくなる必要があるのでしょうか?
大家さんから部屋を借りて運営をしていくのだから、仲が良い方が良いのでしょうが、
「仲良くなり過ぎず、一定の距離感を守りつつ、クールな関係性を保つこと」が大切なのです。
仮に、開業後、建物や設備に問題が生じ、それを大家さんに対し改善依頼するとしたら?
たとえば、
「店のすぐ横にゴミを出しっぱなしにしないで欲しい」
「大家さんの自転車を店舗の前に置かないで欲しい」
「大家さんがすぐ上の階に住んでいて、ドタドタと上階で歩き回る音がうるさい」…等々
こういった、自分の店舗側からの要求も、一旦顔見知りになって仲良くなろうものなら、そうそう簡単に言えなくなってしまいます。
先々、長い運営をしていく以上、いずれは非常に要求しにくい事も発生するかもしれません。
仮に大家さんと契約前から顔を合わせて仲良なったりすると、いずれ大家さんは、以後開業者さんに、あらゆることを直接言ってくる関係になりがちです。
開業者さんは大家と仲良くなっておきたいという思いがあるようですが、実際は、不動産屋のガイドは開業者と大家さんは一切顔を合わせないのがスタンダードです。
開業者と大家さんがお互い言い難いことも、不動産屋さんが間にいるからこそ橋渡しが成立する。
不動産屋は、開業者と大家の関係のバランスを取る代理人ということ。
大家さんとは、必要以上に仲良くなりすぎないよう、気を付けましょう。